事業譲渡契約書の意義

事業譲渡契約とは

譲渡会社が営む事業を、譲受会社に譲渡することをいいます。企業の間では、大規模なものから小規模なものまで、数多くの事業譲渡が行われています。大企業同士で行う大きな事業譲渡以外にも、厳密に定義すれば、飲食店の経営権の譲渡、ウェブサイトの売買なども事業譲渡にあたります。

<事業譲渡のメリット>

事業譲渡のメリットは、何を譲渡対象にするのか、契約当事者間で自由に選択・合意することができる点にあります。譲渡会社が譲受会社に譲渡する対象物としては、次のように多くのものが考えられます。

  • 事業用の不動産
  • 事業用の動産
  • 預貯金
  • 債権
  • 取引先、顧客名簿
  • 営業上のノウハウ
<事業譲渡のデメリット>

デメリットは、債務や契約の承継をする際には、相手方企業の個別の同意を、その都度取得することが必要となる点です。仮に承継しようとする契約が膨大な数にのぼる場合には、契約ごとに同意を得なければならず、手続きの負担が大きくなってしまいます。

事業譲渡契約書の作成において必要な項目

事業譲渡において、どの不動産、動産、権利を承継するという事業譲渡の対象は、個別の合意によって決定しなければなりません。そのため、事業譲渡の対象を明確にするためにも、事業譲渡契約書の作成は必須です。

1.当事者(譲渡会社と譲受会社)
2.対象事業の特定

何を譲渡するのか、明確に理解できるように譲渡対象となる事業を特定します。事業の一部を譲渡する場合には事業の名称や地域名などにより、誰にでもわかるように客観的に特定することが重要となります。

3.譲渡財産の特定

後日のトラブルを避けるために、譲渡対象となる財産について具体的に明確に事業譲渡契約書に記載しておくことが重要です。

4.事業譲渡の対価

対価は、金銭であることが多いです。なお、対価は、無償でもかまいません。

5.従業員の取扱い

事業譲渡で移転されるのは、あくまでも事業譲渡契約書に記載された対象事業です。そのため、事業譲渡契約では従業員が譲受会社から譲渡会社に対して自動的に承継されるわけではありません。そこで、譲渡会社の従業員に、譲受会社で引き続き働いてもらうためには、個々の従業員との間で、個別に雇用契約を締結しなおす必要があります。そのために事業譲渡契約書にも、対象事業に従事している従業員の取り扱いについての規定を定めておきます。

6.表明保証

譲渡会社が譲受会社に対して、様々な事項について、その情報や契約内容が真実かつ正確であるということを表明し、保証するというものです。表明保証事項の具体例としては、事業譲渡契約締結に伴い社内手続きや法的手続きを経ていること、資産・債務・従業員などに関する事項です。

7.事業譲渡前の遵守事項

事業譲渡・譲受に必要な株主総会の承認を得ることや、財産管理における善管注意義務などについて当事者間で遵守することを合意し、事業譲渡契約書に記載しておきます。

8.事業譲渡後の遵守事項

事業譲渡が終了後にも続く義務を規定する場合があります。最もよく規定されるのは競業避止義務です。

以上8項目に限ったものではありませんが、重要な項目として、事業譲渡契約書作成時には注意しましょう。